観潮楼跡かんちょうろうあと

住  所
文京区千駄木1-23-4
アクセス
東京メトロ千代田線「千駄木駅」下車 徒歩3分
東京メトロ南北線「本駒込駅」下車 徒歩10分
Bーぐるバス(文京区コミュニティーバス)
 (16)「千駄木駅(団子坂下)」下車

不忍通りから団子坂を上がってくると、左手に文京区立の鴎外記念本郷図書館が見えてきます。かつてここには明治の文豪・森鴎外が住まいとした住宅がありました。その2階に上がるとはるか品川の海の白波が望めたことから、鴎外はこの家を観潮楼と名づけたのです。

敷地の中には観潮楼の中庭が復元されています。鴎外が幸田露伴、斎藤緑雨と3人で撮影した写真に写っている「三人冗語の石」も後方に見ることができます。図書館の中には鴎外の幼少時からの縁の品、文具やデスマスクなどが公開された展示室もあります。

山口県津和野に生まれた鴎外・森林太郎は東大卒業後、陸軍軍医となり、4年間のドイツ留学を経た後、30歳から60歳で亡くなるまでの30年間をこの観潮楼で過ごしました。「舞姫」に描かれたエリーゼ・ビーゲルトとの経緯を含む鴎外の懊悩は、小説や多くの評伝から推し量ることもできますが、関川夏央原作・谷口ジロー作画による「坊ちゃんの時代2巻・秋の舞姫」に巧みに活写されています。このマンガは鴎外が主人公ですが、漱石、啄木はもとより、少年時代の東条英機から晩年の清水次郎長までが登場し、名前でのみ知る明治人たちがつづれ織りのように織り成す大変読み応えのある作品となっています。

団子坂は別名を汐見坂とも言いますから、きっと昔は東京湾も見えたのでしょうか。今、日暮れ時の鴎外記念図書館の前に立ち、目を細めてほんの少し背伸びをすれば、ビルとクルマの排気ガスに煙るずっと向こうに、鴎外が愛した海のキラキラが見えるような気がします。